会員の皆様へ@ 学会・講習会参加報告を募集します。この項は会員が参加した学会・研究会・講習会などのなかで面白かったよ!こんな情報をゲットしたよ!ということを広く会員に周知し、お互いが高めあうためのものです。学問的なものも、え?というような報告もOKです。今回はコアメンバーによる投稿ですが、今後は広く募集いたします。国内の学会や講習会、もちろんOKですよ!ご協力をお願いします。
会員の皆様へA 文献・成書紹介の募集です。この項は会員が最近読んだ文献や本のなかで面白かったよ!こんな情報をゲットしたよ!ということを広く会員に周知し、お互いが高めあうためのものです。学問的なものも、え?というような報告もOKです。今回はコアメンバーによる投稿ですが、今後は広く募集いたします。日本語の本も、もちろんOKですよ!ご協力をお願いします。
巻頭
◇ 巻頭言 〜会長のひとりごと〜
ハワイの青空と新宿の雷鳴
東京大学大学院農学生命科学研究科・獣医動物行動学研究室 森 裕司
7月半ばのハワイは、常夏の島の名にふさわしく、抜けるような青空と美しい海原が果てしなく広がっていました。ホノルルで開催された全米獣医学会(AVMA)の参加者は過去最高
(1万人強)だったそうです。すでに何人かの先生から報告があったように、日本からの参加者も米国に次いで多く(300名以上)、私たちの研究会メンバーも互いに親睦を深める機会を得ることができました。行動医学の分野では、いつものようにAVMAの中で行動医学専門医協会(ACVB)が企画した二日間の教育講演が行われ、その翌日に別の会場で獣医動物行動研究会(AVSAB)が開かれました。いずれも盛況でしたが、後者については当日参加のキャンセル待ちが出るほどでした。
さてそれから一月あまりたった8月半ば、こんどは真夏の新宿で日本獣医内科学アカデミー(JCVIM)の学術大会が開催され、例年のごとく、わが動物行動研究会も主催者からの要請を受けてシンポジウム(教育講演)を行いました。多忙な中、協力頂いた講演者の先生方をはじめ関係各位にあらためて御礼申し上げます。午後になりセッションも終盤に近づいた頃になって屋外では雷鳴がとどろき始め、やがて電車も立ち往生する豪雨となりました。
これまでJCVIMでの過去三回のシンポジウムを振り返ると、
第1回(2004年8月7日):犬の問題行動−不安関連行動を中心に:都市センターで150名定員の会場が満員となりコアメンバーも入れず。
第2回(2005年8月20日):犬と猫の攻撃行動の診断治療:京王プラザで180名定員の会場に210名ほど詰め込んだが廊下に数十名溢れた。
第3回(2006年8月12日):問題行動の予防:パピークラスの基礎と実践:京王プラザで300名定員の会場ほぼ満席となり丁度良い感じ。
といった流れです。
ちなみに大会2日目の代表者会議で示された第4回JCVIM学術大会の日程は、2007年8月11日(土)と12日(日)に京王プラザで開催されるというものでした。またもやお盆休みのまっただ中、という日程には賛否両論出ましたが、この時期の会場費が安いという背に腹かえられぬ経済的事情もあって仕方ないようです。事務局からは、来年度もぜひ行動学研究会でシンポジウムなり教育講演を企画してほしいと頼まれました。いずれ皆さんのご意見をお聞きするつもりですが、"哺乳類フェロモンの基礎と臨床:行動治療への応用を探る"、といったテーマも候補の一つになろうか、と思っています。いろいろご意見をお聞かせ下さい。
代表者会議では専門医に対するJCVIMの考え方も示されましたが、私が個人的に考えていたことと基本的なところでよく一致しており、また目から鱗と感心する点もありましたので、以下に簡単に紹介させて頂きます。
世界に通用する専門医を選ぶために、まず米国および欧州の専門医(Grand Fathers)に依頼して、日本人の中から国際的にも知名度のある設立メンバー(First
Line Specialists)を4−5名選んでもらう。つまりここでは、設立メンバー(いわゆるチャーターメンバー)を仲間内で選ぶことはしない、というのがポイントです。その設立メンバーが選んだ専門医会議設立メンバー(De
Fact Members;暫定専門医)を必要に応じて数名から10名程度選び、全体的な専門医制度監視機関のもとに、専門医試験の実施と養成機関の運営を担ってもらおうというものです。もちろん現実的な課題は山積していますが、5年後に一人でも専門医を世の中に送り出したいという情熱のもとJCVIMは動き始めようとしています。日本獣医師会にも今春ようやく専門家機構が設置されたようです。
私たち行動医学の分野でも、こうした獣医界の大きな流れをうまく見極めながら、個々の研鑽と情報交換を重ねることで、自分達の分野の地固めを進めていくべきでしょう。やがて世界に通用する(いや世界をリードする)専門家が一人でも二人でもこの研究会から育ってくれるといいな、などと新宿の空を見上げつつ、雷雲の彼方にハワイの青空を見はるかすような気分にひたりながら帰途につきました。
2006 第三回内科学アカデミー 獣医行動研究会プレゼンテーションより
〜パピークラスに関する統一見解〜コアメンバーの集約意見のご紹介
本研究会主催によりパピークラスに関する統一見解をまとめました。
コアメンバーによるパピークラスの統一見解
定義;パピークラスとは,様々な社会化を含む段階をふんだ連続プログラムが設定されているコースを指し,子犬同士の触れ合いや飼い主への情報提供を目的とした,単独プログラムのパピーパーティとは区別される。
実施場所;とくに規定されない(病院で実施すれば,病院に対する社会化も可能となる)
実施回数;5〜8回程度
参加対象;初回ワクチン終了10日以降で健康な子犬(終了時でも5ヶ月齢以下),月齢が揃っていることが望ましい。
参加頭数;指導者一人につき4?5頭程度が望ましい
伝染病対策;会場が室内であれば使用前,使用後の殺菌消毒。
参加個体は,ワクチン接種および皮膚病,外部寄生虫,糞便検査を含む健康診断を必要とする。
担当者;獣医師,動物看護師,しつけインストラクターなどが考えられるが,子犬の医学的問題発生時に対応できるよう,獣医師が含まれていることが望ましい。
内容;下記の内容が含まれていることが望ましい。
・信頼関係を構築することの重要性と甘噛み対処法
・犬に対し:様々な人との社会化,各種刺激に対する社会化,子犬同士の社会化,成犬への社会化,全身を触る練習(ハンドリングやブラッシングを含む),行動抑制(噛みつき抑制)の練習,基礎服従トレーニング(おすわり,ふせ,まて,おいで,注目などを含む)
・飼い主に対し:犬学全般(問題行動予防のための接し方,犬の行動,心理などの基礎的知識),排泄コントロール,クレートトレーニング,食事管理(おやつとフード),お散歩と運動,不妊手術,健康チェック,シャンプーとブラッシング
学会参加報告
<Society for Behavioral Neuroendocrinology meeting >
2006 6/17-20 @ Pittsburgh. USA
東京大学大学院農学生命科学研究科・獣医動物行動学研究室 菊水健史
ピッツバーグにて上記学会に参加した。アメリカではワールドカップはどこ吹く風、ニュースでさえもあまり放送されない。とりあえず試合自体は放送されているが、見ている人もほんの一部のようである。サッカー狂の著者にはいかんともつらい日々である。
本学会はヒトも含めた動物の行動とホルモンがどのように関与するかの研究会である。今回で10回目を数えるが、以前は性行動を中心とした学会として設立されており、かの有名なDr.
Frank Beachがその設立に関与している。彼の仕事に関してはすでに以前の稿でしょうかいしているので、それを参照されたい。私自身はこれで4回目の参加になり、前回は2年前にポルトガルのリスボンで開催された折に参加させてもらった。以下、興味深い発表を2つほど紹介したい。
"Sex and the spotted hyena: costs, benefits and limits of feminine
androgenization (ブチハイエナと性:メスの雄性化に伴うコスト、利益と制限"
Stephen Glickman, Department of Psychology, University of California,
Berkley.
会員の中にもご存知の方も多いかと思うが、ブチハイエナのメスは非常に特徴的な体型をしている。メスでもペニスが存在するのである。実際はペニスサイズに見えるクリトリスであるが、その大きさはオスのペニスに劣らない。そのペニス化したクリトリスの先端の開口部は膣と尿道が続いていることから、メスはこの器官を用いて排尿し、交尾を行う。また出産時の産道となるわけである。メスのブチハイエナは体自体もオスより大きく、攻撃性も非常に高い。また高い社会性の群れを形成するものの、オスとメスは別々の社会階層を形成し、新参者のオスははじめメスのヒエラルキーに入れられ、最下位に位置されるところから始まるなど、その社会行動も一般的な哺乳類と異にする。その社会構造の特異性やメスの興味深い体型から神経内分泌、社会行動の研究対象となってきた。かのFrank
Beachもこの動物に取り付かれ、1985年、カリフォルニアバークレー校にアフリカらからブチハイエナの仔を持ち帰り、コロニーを確立した。その後神経内分泌学、行動学的な解析が行われている。
一般的なオスの外生殖器の発生にはテストステロンが関係する。発達過程にある精巣から放出されたテストステロンがアンドロゲン受容体に作用し、外生殖器をメス型からオス型へと変化させる。とすれば、ブチハイエナのメスがオスと似た体型を獲得する過程にはアンドロゲンの作用があると考えるのが妥当であろう。Glickmanらは子宮内のテストステロン値を測定したところ、通常より高いテストステロン値が認められた。しかし、仔の生殖器の発生を詳細に調べてみると、外生殖器の発達は精巣や卵巣が完成する前に始まっていることが認められたことから、子宮内の高いテストステロンは仔自身が作り、放出しているわけではないようである。胎盤にもその産生が認められないことから、高いテストステロンはおそらく母体からのものであると推察されている。ではこのテストステロンの作用を阻害すれば、メスはペニス様のクリトリスを持たなくなるのであろうか。彼らは妊娠メスの子宮内にアンドロゲン受容体の拮抗薬を投与し、その後の仔の成長を調べた。残念ながら、メスのペニス様クリトリスは消失することはなかったが、その大きさには少し変化が認められた。他のメスに比べてアンドロゲン作用を障害されたメスでは太く短いクリトリスになった。多少の雌雄差はアンドロゲンの作用で説明できたものの、メスで特に大きくなるクリトリスの説明はいまだにできていない。これらはもしかしたらステロイドホルモンに依存しない生殖器の発生メカニズムがあるのかもしれない。
子宮内でアンドロゲン作用を障害されたメスでは、オスに対する攻撃性も低下し、また興味深いことにオスからの交尾をよりよく受け入れ、妊娠率、出産率などが上昇したことから、優秀な繁殖能をもつメスとなったのである。通常のメスのハイエナでは交尾を受け入れる確立は50%前後、妊娠率は35%前後と非常に低いものが、アンドロゲン作用を障害されたメスではそれぞれ75%と100%と、非常によい値になった。これらのことは、メスのブチハイエナは子宮の中でアンドロゲンに暴露されることにより、その生殖能力の一部を抑制されているということになる。生殖能力を一部抑制してでも、アンドロゲンの作用をうけ、大きなクリトリスと攻撃性を身に着けることのメリットは何であろうか。もちろん少ない餌をめぐる闘争行動の上昇や闘争のためのディスプレーとしてのクリトリスなのかもしれない。現在はその意義はまだ明らかにされておらず、今後の研究がまたれよう。
"Regulation of emotionality peripartum by brain oxytocin and prolactin(脳内オキシトシンとプロラクチンによる周産期の情動反応性の制御"
Inga Neumann, Institute of Zoology, University of Regensburg, Germany.
周産期における母親の感情や情動の変化は大きく、一般的に不安行動が低下し、安定した精神状態になるとされているものの、10%程度の女性では逆に不安の上昇、うつ傾向などが認められ、ヒトの臨床的にも問題となっている。これらのことは特にヒトに特異的ではなく、動物でも認められる。出産の近づいたメスでは神経質になり、ヒトから遠ざかって、母性攻撃が高くなるものがいることは、読者にも経験のある人が多いのであろう。
これらの情動反応性の変化は神経内分泌的なダイナミクスが制御するのであろうか?Neumannらは出産に伴い脳内と抹消で放出量が劇的に増加する2つのホルモンに着目した。オキシトシンとプロラクチンである。これらは母動物が正常に授乳、哺育行動を行うのに必須のペプチドホルモンである。彼女らはまず脳内の不安行動をつかさどるとされる扁桃体中心核と視床下部室内側核におけるオキシトシンの濃度を測定した。授乳中にあるメスラットではその刺激を受けることで高いオキシトシンの放出が認められた。この脳内におけるオキシトシンの作用を阻害すると不安行動が上昇し、逆にオキシトシンを投与することにより不安行動が低下したことから、仔育てを行う母動物の不安行動が低下するのはおそらくオキシトシンの放出が増大するためと考えられる。これらのオキシトシンの作用は未経産のメスでは認められなかったことから、おそらく出産に伴う受容体発現量の増加があり、それに加えて仔からの授乳刺激によるオキシトシンの放出が不安行動を起こす鍵となっているのであろう。未経産のメスの脳内に強制的にオキシトシン受容体を発現させることで、育仔中のメスと同じようにオキシトシンによる不安行動の軽減が認められることから、受容体の発現の高低が重要であることが確かめられている。これらのオキシトシンの作用は不安行動や母性行動と深く関わっているようである。プロラクチンに関しては簡略するがオキシトシンと同様の不安軽減作用があるとのことである。
彼女はこの10月に横浜で開催される第1回行動神経内分泌研究会に来て講演してもらうことになっている。僭越ながら私もその実行委員となっており、是非彼女にこれらの非常に興味深い話題を日本でも紹介してもらえたらと思う。
簡単ながら2つだけ紹介させていただいた。その他面白い話題は事欠かない。また機会があれば紹介させてもらいたい。
<143th American Veterinary Medical Association annual
convention> 
2006 7/15-19 @ Hawaii. USA
<The American Veterinary Society of Animal Behavior & American
College of Veterinary Behaviorists Meeting>
2006 7/17 @ Hawaii. USA
これらの学会にはアメリカ国内はもちろん日本からも多くの獣医師が参加しました。AVMAの全参加者は一万人を超え、これまでのレコードとなったようです。その中でコアメンバーの数人に、感想を含め学会に関する原稿を400字程度と限定して依頼しました。
日本犬の問題行動 どうぶつ行動クリニックFAU 尾形庭子
AVMA側から「日本犬」がアメリカで人気が出てきて興味のある人が多いだろうからその問題行動について話してほしいといわれ、そちらの用意をしました。
しかし少なくとも私の知っているアメリカ人(獣医関係者)でも秋田犬以外みたことのないヒトがほとんどなので、広く浅く日本犬についてビデオを使って「病院内の保定で鳴き叫んでいる柴犬」などを紹介しました。
アメリカでの行動療法や投薬の有無も日本犬では治療のゴールとして目指すべきスタンダードが違うのではないかと個人的には思っていますし、近年遺伝的分類でわかったように日本犬がいわゆる「洋犬」に比べるとAncient
breedであることもそのユニーク性の一因なのだと思います。行動クリニックを始めた頃よく先生方が「日本犬に欧米式のしつけやトレーニングを用いるのは無理なんじゃないの」ということで、正の強化を用いたしつけやトレーニングそのものにすら否定的だったのも、思い出されます。そういう印象や意見があるからこそ、なぜ日本犬は違うのかどこが違うのかなどが今後科学的に示せれば、国内国外とも「個体に合わせて
より客観的に治療法を選ぶ」という流れにつながるのではと思っています。
東京大学、武内先生の元ではすでにそのような研究もはじまっているので、今後の成果が楽しみですね。
ウサギの問題行動 柿沼ペット動物病院 柿沼 綾子
他の参加者の皆さんは、AVSABその他の、アカデミックな報告をしてくださるでしょうから、私は日本語通訳つき、VT向けのセミナー、ウサギの問題行動について。
学校飼育動物の指導に時々行くから、その参考になればと聴きに行ったのですが、まず驚いたのは、ペットウサギの定義、おおむね8`以下、トイレトレーニングができる、人に懐き人と遊ぶことができる。犬や猫と同じく人の居住空間で自由に生活させることが基本、ケージ内での飼育などもってのほかのウサギについてでした。講師はジョージア大学のCrowell-Davis先生。もうすぐ日本に帰ってきてくださる入交先生のボス。
自分がペットとして飼っているウサギ好きの先生なので、とてもわかりやすい講義でした。ウサギの問題行動は、1)排泄 2)攻撃行動(原因はいつも恐怖からとか)
3)他のウサギとの相性 4)破壊行動 ほとんどはウサギ本来の生活様式を理解すれば解決できるけど、グループで生活しているはずの穴ウサギでも子供の頃から一緒に育った仲間でないと喧嘩が絶えない場合も多いとか。
まだ家畜になって2000年、改良されるようになって600年の動物。これからペットとして数が増えるでしょうけど、「被捕食獣だってことを忘れないでね。」とのことでした。
AVMA/AVSAVに参加して P.E.T.S.行動コンサルテーションズ 水越美奈
7月15〜19日にハワイ・ホノルルで開催されたAVMAといつもAVMAに併せて行われるAVSABの大会に参加してきました。いつものことながら当日までバタバタと仕事をこなして疲れ切った状態で行く海外ですが、どんよりとした梅雨空の日本から、突き抜けた青空が広がるハワイへの到着はそれだけで気持ちをすっきりリセットしてくれます。ハワイは7年ぶり、AVMA/AVSABは3年ぶり、ということだけでもテンション上がりっぱなしの1週間でした。新しい発見はそれほどなかったけれど(AVSABの大会がいつもより気合いが感じられなかったのは私だけでしょうか?とても残念に感じました)、獣医行動の講座に出席し、同じように考えて同じ道を行く同士がこんなにいる、ということを感じるだけでもいつも大きな刺激になります。いつものことですが帰国後すぐは来年も絶対行く、発表できるように頑張る、と心に誓うのですが、来年はワシントンDC、東海岸は遠いなぁ、と、それだけで凹んでしまう私もいるのでした。
コアーメンバー夕食会 in Honolulu 臼井犬猫病院 臼井玲子
むし暑い日本を後に、AVMA(アメリカ獣医年次大会)出席のため7月13日ホノルルに到着。
多くの参加者より一日早い到着とあって顔見知りの方々は皆無。なんだかちょっと得した気分で、ホテルに直行。「あっーやっぱりハワイはいいですネ!!!」などと、独り言。いつもの慌しい日常を離れ、ずーとこのまま時間が止まったらいいのに・・・
7月17日、ついにその日がやってきました。一同に会しての食事会。料理もさることながら、お会いできることがとても楽しみ。場所は、アラモアナホテルから数分、コンベンションセンターの斜め前、カピオラニ通り沿いの、XOというチャイニーズレストラン。参加者は、森先生、武内先生をはじめ尾形先生、荒田先生、内田恵子先生、柿沼先生、水越先生、入交先生そして臼井の総勢9名。XOというちょっと怪しげな看板がコンベンションセンターから見えて・・・
お値段もお手ごろで、一安心。お酒が好物の方々は、まずは、「CHINTAOビール」そして、紹興酒。自然と話もはずみ、美味しかったことだけは、よく覚えています。とくに好物のカニ(甲羅の味噌)は、大人の味でした。ちょっとほろ苦く、肝心の料理名は、???よく出で来るあの料理です。ちょっと濃いめ
のお味で、黙々と食べちゃいました。この姿は、だれにも見せたくないけれど・・・コレステロールが上がったって許しちゃう気分の夜でした。今度は何処行く?
<40th International Congress of International Society of Applied
Ethology> 2006 8/8-12 @ Bristol. UK
酪農学園大学獣医学部伴侶動物医療部門 内田佳子
この学会は行動学・生態学・動物福祉などの分野(生産動物、伴侶動物、実験動物、展示動物全般)の研究者達の集まりです。獣医師とは限らず幅広い人間たちの集まりで、私にとっては多くを学ぶ機会であります。
開催場所ブリストル大学は世界の動物福祉の最先端大学で、しかも、伴侶動物の行動治療グループが獣医学部の中にあって動物病院で診療を行っている大学であることから、渡英を決意しました。学会発表・行動治療科の診療見学・ブリストル市内しつけ教室見学・行動展示で有名なブリストル動物園見学、さらには趣味のサファリツアーと欲張りそのものの計画を立て遂行してきました。
何と言っても歴史的・文化的価値の高い、聖堂のようなブリストル大学講堂が会場で、それだけで感動ものでした。
私の発表は同居犬間の行動の差から犬の階級について分析してみたところ、どうやら優位な地位を狙いたいという魂胆を多くの飼い犬が持っているとは思えないという内容。他には、攻撃行動と犬種差の関係に関して11犬種1563頭という膨大なデータ解析結果の報告や、社会化期の中でも特に始めの3−5週令時の新奇刺激への暴露が社会化期後半により自信に満ちた行動を起させるとの報告、咬傷事故に関する分析、膀胱腫瘍探知犬の臭い識別能の個体差について、犬の分離不安や攻撃行動の評価法、猫のストレス評価法など数々の伴侶動物に関する発表がありました。ポスター発表も面白かったです。
ブリストル大学の行動治療科の進め方で私の大学との差異は、聞き取りをとても丁寧に行っている点と行動変容の指導はほとんどが口頭であったことです。
後者については日本では一般の飼い主さんには無理だよなあと感じました。レジデントが二人(ともに獣医師)いて、そのうちの一人が来年、日本で開かれるIAHAIOの紹介にすごく関心を持ち「行きたい!何発表しよう!」と意気込んでいました。森先生、一人ゲットしました(^^)。実際の治療はほとんど差は無く、うなずけるものばかりでした。マズル・コング・DAP・・・など数サイズあらかじめ用意しており、準備がしっかりしてるなと思いました。診療は2時間程度、料金は150ポンド約32000円です。あと、アテンションについてかなりこだわって注意を与えていました(得ることではなく、褒賞としての)。プリントも用意して飼い主に渡していました。アテンションを褒美と認識せずに与えている飼い主が多いからでしょう。日本でも同じですよね。
ブリストル動物園は旭山動物園同様、珍しい動物は全くいないのですが(パンダやコアラはもちろんトラ、キリン、象さえいません)、旭山以上に行動展示に重点を置いており、動物本来の行動をしっかり見ることができました。また動物と人間との距離が近いことも特徴でしょう。動物の生態や福祉を重視しているので、どこに動物がいるのか一所懸命探してみたりして・・・・楽しい時間を過ごしました。
しつけ教室で何と言っても感動したのは、3クラス(それぞれ1時間)をぶっ続けで一人でインストラクターが指導したこと。すごい体力です。18時半から21時半までですよ!パピー、ブロンズ(パピーにちょっと毛が生えたもの。KCのCGCの規定の中の一過程)、ビギナーのクラスを見せていただきました。このインストラクターは非常に技術がありました。犬に対しても人に対してもです。デモンストレーションが上手で、とにかくどの犬からもすぐにアテンションを得るすべを得ていました。また強化子としてのフードのはずし方にもしっかり言及しており実際のところパピークラスとブロンズクラスとでは褒め方の違いを見て取ることができました。飼い主への指導も的を得ており、上手に褒め、上手にけなし、目をつぶるところはしっかりつぶって・・・(私は、けなしが多過ぎかも)。あっという間の3時間でした。
以上、旅行日記のような報告でした。
文献・成書紹介
1 The use of DAP collar to reduce stress during training
of police dogs A preliminary study
警察犬のトレーニング期間に生じるストレス減少を目的としたDAPカラーの使用 予備的研究
( Schroll, S., Dehasse, J., Palme, R., Sommerfeld-Stur, I., Lowenstein
G.)
皆さんご存知の、DAPの使用方法としてこんなのもありなんですって!という情報を五十嵐和恵先生からいただきました。(オーストリアのVET−MAGAGIN.COMというWebから引用。英語。要旨のみ内田佳子訳。詳しく読みたい方は、
http://www.vet-magazin.com/wissenschaft/verhaltensmedizin/Verhaltensforschung/DAP-collar.html を参照してください。)
オーストリアの警察犬は8週令からおよそ1.5歳までを家庭で過ごし、その後15週間の専門トレーニング期間を飼い主・トレーナーと共に専用犬舎を備えたトレーニングセンターで過ごす。この時期の犬は環境が大きく変わることに加え、新しい色々な場所でのトレーニングを課せられる事から、大きなストレスを受けることになる。そこで、DAPカラーを用いてこのストレスを減らすことができるかを二重盲検法で調べた。使用した犬9頭を2群に分けトレーニングの前半4週間、それぞれDAPカラーまたはダミーカラーを着用した。ストレスの判定は唾液中コルチゾル値、身体的なまたは行動学的な徴候によった。
夜間の犬舎内観察により各群一頭に数回10分間以下の吠えを観察したが、他の犬たちはそれに誘引されること無く静かに過ごしていた。朝、犬舎から出された際にプラセボ群の1頭で数日間激しいパンティングが、もう1頭で犬舎のプラスチック製バスケットの破壊が見られたが他の犬は全て落ち着いており、のびやあくびをしながら出てくるのが観察された。体重変化についてはDAP群では無かったが、プラセボ群で体重が減少する傾向(p=0.069)が見られた。2週間経過時の唾液中コルチゾル値はプラセボ群に比較しDAP群で有意に(p=0.016)低かった。これらのことより、DAPは若犬の警察犬候補としての集中訓練の際、犬の福祉に役立ち、飼い主も満足するものであることが示された。
2 Sustained hippocampal chromatin regulation in a mouse
model of depression and antidepressant action
Nadia M Tsankova, Olivier Berton, William Renthal, Arvind Kumar, Rachel
L Neve & Eric J Nestler
うつ病と抗うつ薬作用のマウスモデルにおける海馬クロマチンの長期的制御
東京大学大学院農学生命科学研究科・獣医動物行動学研究室 菊水健史訳
トラウマ的経験を継続的に受けることによる行動変化、たとえば不安の上昇、うつ様症状などは、脳内における周囲環境に対する適応反応と考えられている。またこれらの適応的な行動変化は、長期的にみられることから、脳内の情動行動に関与する遺伝子がエピジェネティックに変化することが想定されている。しかしその脳内メカニズムに関しては明らかになっていなかった。Nestlerらはうつや攻撃性、不安との関連が示唆されている海馬における脳由来神経栄養因子(BDNF)に着目した。現在までBDNFは抗うつ薬による行動の改善行動変化の際に必須であることが知られている。彼らの研究により、社会的敗北を繰り返し受けたマウスでは不安行動が増強してくるようすが認められた。これら社会的敗北を繰り返し受けたマウスにおける海馬BDNFのsplice
variantに関与する遺伝子発現制御領域におけるDNAクロマチンを調べたところ、第3−4エクソン制御領域のヒストン脱メチル化が認められ、これに平行してBDNFの発現量が低下していることが明らかとなった。また三環系抗うつ薬のイミプラミンの長期投与により社会不安行動は改善され、平行してBDNFの発現量の改善が認められた。しかしBDNF第3−4エクソン制御領域のヒストン脱メチル化は改善することができず、その代わりに同じく遺伝子の発現を変化させるヒストンアセチル化が認められた。このイミプラミンの長期投与によるヒストンアセチル化はヒストン脱アセチル化酵素の発現の抑制を介していることが認められた。これらのことより、社会的ストレスは脳内におけるBDNF遺伝子の発現制御をDNAレベルから変容させること、その影響は永続的であり、抗うつ薬投与では元通りにならないことが示された。抗うつ薬投与による行動の改善は、同じBDNF制御部位におけるアセチル化が関与しており、作用点がことなることが示された。
薬物によるうつや不安の改善が補助的であり、根本療法にならないという臨床上の経験は、このように作用点の違いからくるものかもしれない。トラウマ的経験による遺伝子制御領域の変容を元に戻す方法が見つかれば、臨床応用が進むものと期待されよう。
3 心と遺伝子 山元大輔著 中央新書クラレ
東京大学大学院農学生命科学研究科・獣医動物行動学研究室 菊水健史書評
ヒトの行動や思考、身体の反応には様々な個人差がある。ある人はついつい食べ過ぎてしまう上に太りやすい体質だったり、いくら妻(彼女)におこられてもどうしても他の女性にちょっかいを出してしまったり。周囲を見渡すとありとあらゆるタイプの人が存在し、カオス的な社会構成になっていることは、誰の目にも疑いの余地はないであろう。筆者にも"くせ"のようなものが多々存在し、例えば週末の(昼からの)晩酌がやめられなかったり、人の集まる場所には好んで出かけたり、動物と戯れたりすることがこの上なく楽しい。これらの個体のもつ特性は特に人に限られたものではない。動物の世界を見渡しても、さまざまな"個性"が存在する。例えばイヌを例に挙げると、いくらご飯をあげても足りないラブラドールに対して、餌をなかなか食べてくれないプードルもいる。ちょっとした刺激で攻撃的になるものもいれば、穏やかで人懐っこいイヌもいる。このような犬種差や個体差は身近に感じてはいるものの、その意義や背景に関してはなかなか考えが及ばないのではないだろうか。
本書は"いろいろな個人差がどのように形成されていくのであろうか"という疑問に生物学的観点から答えてくれる。人も生物である限り、生物学的背景を元に身体が形成され、行動することになる。とすれ、"こんなタイプ"という個々の違いも、生物学的裏づけがとれるはずである。近年の分子生物学的手法は、このような個体差を生むメカニズムを解き明かしつつある。トピックとして浮気・食欲・子育て・睡眠・恋愛をとりあげ、これらの行動が遺伝子レベルで精緻にコントロールされている様子をわかりやすくまとめてある。例えば浮気に関する分子メカニズムについては、アメリカイリノイの草原に暮らすプレーリーハタネズミに関する研究で明らかになった"つがい"の神経メカニズムが哺乳類全般の"夫婦の絆の深さ"に関係するかもしれないという仮説が立てられている。人でもプレーリーハタネズミと同じ神経機構をもつことから、本当にそうだと考えると読んでいて楽しい気分になる。その他としては母親から子への愛の形成が上手に行われた場合には、その子が"ストレスに強い子"に発達していくメカニズムなど、本書を読み進むことで日常で感じる疑問が少しずつ解きあかされていくことであろう。
著者の山元大輔氏とは研究会や学会などで大変お世話になっている。いつもにこにこと笑いながら、こぼれるばかりの豊富な生物学的知識を交えた話しの大変上手な先生である。昆虫の生態と行動にほれ込み、現在はショウジョウバエの行動遺伝学者として世界でも名高い研究者である。東京農工大学を卒業後、三菱生命科学研究所、早稲田大学を経て現在は東北大学で教鞭をとりながら一線の研究を続けている。その研究に対する熱い姿勢は心打たれることが多い。今後、"東北ではこんな楽しい虫がいたよ"とまた楽しい話を聞かせてもらえるのではないかと期待している。本書を読むことで山元先生の"生物学への知の意欲"も感じられるのではないだろうか。
4 Click Your Way to Rally Obedience. by Pamela S. Dennison.
2006 Alpine Publications Inc.
酪農学園大学伴侶動物医療部門 内田佳子書評
私がラリーオベディエンスに出会ったのは、昨年の夏でした。AKC主催の地方の小さな大会でしたが飼い主と犬との楽しそうな様子にしつけ教室の中に一部取り入れようと思ったものです。本書は他の本を探している時に偶然見つけたもので、著者を良く知っているわけではありません。彼女はアメリカにたくさん存在するこれまでの伝統的な罰を用いる訓練方法から正の強化を主とした訓練方法へと移行した訓練士のひとりで、本の内容は学習理論に基づいており、心地よく読むことが出来ます。ひとつの動作を教えるための方法が丁寧に書かれており、パピークラスを始め、いわゆるしつけ教室を行っている先生たちにも役立つと思います。ラリオベに関するものだけではなく、例えば、呼び戻しゲームのひとつとして犬に飼い主のそばにいることを選択させるための方法として「ウサギのように右へ左へと動き回って犬に追いかけさせ、たくさん褒めるというゲームをしましょう」なんてのがでてきます。うちのちびでこれをやったところ大喜び!もともとママ大好きっこですが、すぐにフリーにするとせがんできます(^^)。(コリー雄にやったところ襲われましたが)パピークラスに絶対使えるチップですよね!
編集後記
とりあえず、動き出そうということでニュースレターなるものを作成することになりました。初めての号ということで、書いているのは全部コアメンバーたちです。今後3ヶ月に一回くらいの割合で発行します。一言で言えば、寄せ集めのニュースレターを考えています。この学会で聞いた話が良かったとか、読んで面白かったためになった本とかを、その都度編集者内田佳子までメールしてください。難しい内容にならないように、できれば400字程度にまとめてください。英語文献については是非これを載せたいと思えば教えてください。面倒なら私が訳します(全文の訳はしませんから、たいした手間ではありません)。あと、学会や講習会の情報(行動関係に限る!)も教えてください。国内のもの特に大歓迎です。講師を頼まれた先生、市民対象の講演会でもOKです。会員のみなさんが飼い主さんに話をする際の参考になりますから。(内田佳子)